ホルマリンを誤注入 患者が告訴状提出

兵庫県姫路市の病院で、去年内視鏡検査を行った際、患者の体内に、誤って有害なホルマリンを入れるミスがあったことが分かりました。体内にホルマリンが入った患者は56人にのぼり、このうち1人は後遺症が出たとして、担当の医師について業務上過失傷害の疑いで警察に告訴状を提出しました。
ミスがあったのは、兵庫県姫路市にある製鉄記念広畑病院です。病院の事故調査報告書などによりますと、去年7月、70代の男性患者に内視鏡検査を行った際、本来は精製水を入れて十二指腸を洗浄するところ、誤って濃度10%のホルマリンを120ミリリットル注入したということです。

ホルマリンは医療器具の洗浄に使われますが、人体には有害で発がん性も指摘されているということです。患者の代理人の弁護士によりますと、患者は全身の神経痛などの後遺症が出たということで、検査を担当した内科部長が確認を怠ったのが原因だとして、13日業務上過失傷害の疑いで警察に告訴状を提出しました。

会見した患者の息子は「健康を何より大切にしていた父が医療ミスで苦しめられ、憤りを感じています。警察の捜査で責任を追及してほしい」と話していました。

また、病院などによりますと、この患者のほかにも、同じ去年7月、55人の患者の体内に洗浄の際に使ったホルマリンが付着した内視鏡が入れられたということです。告訴状の提出について、病院は「内容を確認し、適切に対応したい」とコメントしています。

出典:NHK NEWS WEB

江戸川病院、肝生検後の患者死亡で提訴される(報道)

テレビ朝日「「見殺しです」検査2日後に死亡…医療ミスか」(2015年6月9日)は,次のとおり報じました

「おととし、東京の「江戸川病院」で、25歳の男性が検査を受けた2日後に死亡しました。遺族は、病院に医療ミスがあったとして損害賠償を求めて提訴しました。

東京・葛飾区の佐藤雅英さんは十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)による出血のため、おととし12月、江戸川病院に検査入院しました。病院で肝臓組織の一部を切り採って調べる「肝生検」の検査を受けましたが、その2日後に死亡しました。
雅英さんの父親・博義さん(57):「検査後にあっという間に死んでしまった。我々にとって残酷な仕打ち。インフォームド・コンセントですか、一切、ありませんでした」
死因について病院側は悪性リンパ腫としていますが、遺族は血液中の血小板の数値が低いにもかかわらず、肝生検を実施したため、出血性ショックで死亡した可能性があるとしています。
雅英さんの父親・博義さん:「(病院側が)何の止血処置もせず、見殺しですよね」
遺族は6日、病院側を相手に1億2500万円余りの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。江戸川病院は取材に対し、「訴状を見ていないのでコメントできない」としています。」

本件は,上記報道からは,肝生検を実施すべきではないのに実施したことを過失とする趣旨か,出血性ショックの治療が遅れたことを過失とする趣旨か,判然としません.
前者とすれば,東京地裁平成22年1月22日判決は,以下のとおり,肝生検を実施すべきではない症例で肝生検を実施すしたことを過失と認定しましたので,ご参考になると思います.

「争点(2)(被告B3が肝穿刺を実施したことについての過失の有無)について

原告らは,①肝穿刺実施前のA4の状態は,DICの状態が継続しており,肝穿刺の実施は急激な肝内出血を助長する危険が大きかったこと,②A4のWBC・CRPの数値などの事前のデータからしても,上記腫瘤(腫瘍)が膿瘍である可能性は極めて乏しく,これが胆汁瘻である場合にも,排泄する必要は乏しいことなどからすると,被告B3には,上記腫瘤を膿瘍と誤診し,肝内出血が進行していたA4に対し,急激な肝内出血を助長する危険が大きく,必要性のない肝穿刺を実施した過失がある旨主張するので,以下検討する。

前記1⑶ないし⑸で認定した事実及び証拠(甲B9,12,証人T,鑑定の結果)によれば,A4の前記臨床経過,腹部CT検査(単純CT,造影CT)及びMRI検査からすると,3月1日の肝穿刺が実施された際には,上記肝内腫瘤(腫瘍)は,肝膿瘍や胆汁瘻である可能性も否定できないものの,血腫であることが最も疑われるところであったこと(当時の放射線科医師へのコンサルトの結果では,H医師は,上記肝内腫瘤は,造影CTに高吸収域があり,血腫が最も疑われるとの意見であり,I医師は,MRI検査の結果では,胆嚢の吸収域と近く,胆汁瘻の可能性もあるとの意見であって,MRI検査の結果は,血腫が疑われるとの造影CT検査の所見と矛盾するものではないこと)が認められる。
なお,I医師作成の3月2日付けのMR検査報告書(乙A1の146頁)には,肝前区域に直径7cmの嚢胞性塊があり,その内容は,MRI上,血性とはいえず,外傷機転であれば胆汁性肝嚢胞が疑われ,周囲肝組織の浮腫所見は認められず,膿瘍としては非典型であるとの記載があり,I医師は,MRI検査からは,外傷機転としては肝内胆管損傷による胆汁瘻の可能性が高いと診断するのが妥当であり,次に疑われるものとしては膿瘍の可能性であり,血腫の可能性が高いとは診断できない(乙A12)とするが,これらの証拠はいずれも前記認定と矛盾するものではない。

ところが,被告B3らは,上記肝内腫瘤(mass)は,血腫や肝膿瘍の可能性があるものの,感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいと判断し,A4が感染を伴っており,それによる発熱や疼痛がみられる状態であれば,化学療法等の影肝穿刺実施前に肝内の腫瘤(腫瘍)は血腫であることが最も疑われていたため,響によってWBC数が更に減少していくことが予想され,感染症により重篤な事態に陥る危険性が高く,化学療法の継続も難しくなることから,感染を伴う胆汁瘻や肝膿瘍であれば緊急に穿刺して排出する必要があると判断して,A4に対する肝穿刺を決定したのであり,被告B3らが,上記のとおり肝内腫瘤は血腫であることが最も疑われるにもかかわらず,感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいと判断し,A4に対する肝穿刺を実施したことは不適切であったといわざるを得ない。

そして,仮に被告B3らが上記肝内腫瘤は血腫であることが最も疑われると判断した場合には,診療経過等に照らすと,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であるにもかかわらず,遅発性の出血が生じていることが疑われ,A4に出血傾向がある可能性が高いことになるから,3月1日の時点では肝穿刺を実施すべきではなく,実際にもこれを実施しなかったものと認められる。
このことは,前記のとおり,被告B3は,肝穿刺の実施により上記肝内腫瘤が血腫であることを確認した後,原告A1に対し,血腫の疑いがあり,このまま保存的に経過観察すること,血腫が増大傾向ならば,血管造影,手術等をも考慮すること,今後感染等があり,肝膿瘍へ移行する可能性があり,その際には穿刺することを説明したこと,B2病院のF医師も,原告A1及び原告A3に対し,CT,MRIからは,80から90%血腫が考えられ,事前にこれらをみていたら,穿刺は指示せず,経過観察を指示したと思うと述べていることからも,明らかというべきである(なお,A4の2月14日のDICスコアは7点,2月15日のDICスコアは8点であったこと,被告B3らは,3月1日のDICスコアは5点であり,白血病及び類縁疾患,再生不良性貧血,抗腫瘍剤投与後などの骨髄巨核球減少が顕著で,高度の血小板減少をみる場合に当てはめた場合には6点となり,DICの疑いがある状態と判断していたこと(乙A9,被告B3)は前記認定のとおりである。また,鑑定人U1の鑑定意見では,3月1日の時点で,A4は,FDPが上昇し,プロトロンビン,凝固の機能が低下していることから,DICの状態にあったとされている。)。

本件における鑑定の結果をみても,鑑定人U2の鑑定意見では,肝内腫瘤(腫瘍)について血腫の可能性が高く,背景にDICがあり,抗凝固剤が投与されている状態で,出血しやすい肝穿刺をするのは,相当の理由がないと許されないとされているところであり,血腫が感染している可能性があるとしても,抗生剤の投与によって対応し,肝穿刺を実施すべきではなかったとされている。

また,鑑定人U1の鑑定意見でも,A4の場合には,血腫が鑑別診断の第一に挙げられ,肝穿刺を実施した場合には,そこからの出血と腹腔内出血等の合併症が起きる可能性が高いことからすると,肝穿刺を行う前に,より侵襲の少ない血管造影検査あるいはMR胆道造影などによる質的診断を行うべきであり,そして,感染症の可能性に関しても,本件における肝膿瘍の起炎菌は基本的に腸管から由来する菌であり,スペクトルも決まっているため,必ずしも肝穿刺を実施して菌を同定しなくとも,抗生剤で対応することができ,リンパ腫の影
響によるWBCの低下についても,G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)投与により対応できた可能性が高いから,肝穿刺を実施したことは不適切であり,このことは仮に血腫が感染している可能性がある場合も同様であるとされている。

さらに,鑑定人U4の鑑定事項に対する意見の要旨では,肝穿刺の適応については不適切とはいえないとされているものの,鑑定意見では,A4の発熱が以前から認められていたこと,CRPが2.3程度の軽度の上昇にすぎなかったことから,緊急に3月1日の夕方に肝穿刺を行う理由は乏しく,血管造影を実施したり,抗生剤を投与したりすること等による,保存的治療(内科的治療)も可能である,仮に血腫が感染している可能性がある場合も同様であり,肝穿刺を実施する前に,動脈性出血が否定的であること,発熱の原因が肝内血腫の
感染以外に考えられないことを確認すべきであるとされているところである。

これに対し,鑑定人U3の鑑定意見では,肝穿刺を行わずに保存的治療を行う選択もあり,後からみれば,もう少し穏当にやっていた方がよかったという意見が大勢を占めるのはやむを得ないが,その時点の主治医の判断を尊重したいとして,被告B3が肝穿刺を実施したことは適切であると結論されるものの,3月1日のA4の感染の症状について,発熱に関しては以前からあり,この発熱をもって感染症が進行したとはいえない,CRPの上昇もわずかであることを考えると,この時点で,非常に重篤な感染症があったと判断するだけの材料はないが,その日に感染の兆候が明らかでないとしても,A4は全身状態が悪い状態であることからすると,血腫に感染があり,数時間の経過で病状が変わらないとは断言できないから,感染の可能性が高く,穿刺の必要性があるといった主治医の判断は,少し後からみると問題なしとしないが,瑕疵があるというほど責められる判断ミスではないとされている。したがって,鑑定人U3の鑑定意見は,その結論はともかく,その前提となっている医学的知見及び医学的評価については,他の鑑定人らの鑑定意見と対立するものではないというべきである。

加えて,3月1日午前6時30分ころに採取された血液の培養検査の結果では,そのうちの1本からR-CNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されているところ,鑑定人U2の鑑定意見では,血液をボトルに入れる際に検体外から菌が入ってしまうコンタミネーションということがしばしばあり,特に上記菌は肝膿瘍の起因菌として主要なものでなく,コンタミネーションがあり得る菌であるから,そのことを積極的な根拠として肝膿瘍を強く疑うことはしないとされているところであり,他の鑑定人らの意見もこれと同趣旨である(なお,被告らは,各鑑定人の鑑定意見は,実際と異なり,肝穿刺により得られた血腫からの血液培養であることが前提となっている旨主張するが,鑑定人U2の鑑定意見では,MR-CNSは肝膿瘍の起因菌として主要なものではなく,血液をボトルに入れる際に生じたコンタミネーションであると指摘されているところであり,これは必ずしも肝穿刺の手技を前提とするものではないから,被告らの上記主張は,鑑定人U2の上記意見の相当性を左右するものではない。)。

これらのことからすれば,それまでの臨床経過,腹部CT検査,MRI検査の結果等からすると,A4の肝内病変(肝内腫瘤)は,胆汁瘻や肝膿瘍である可能性も否定できないものの,血腫であることが最も疑われる状態であり,仮にA4に感染の可能性や疑いがあったとしても,抗生剤の投与等により対応可能な状態であり,緊急に肝穿刺を実施しなければならない必要性は必ずしも高くなく,他方で,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であり,しかも,A4の肝内病変は血腫であり,遅発性の出血が生じていることが疑われることから,肝穿刺を実施した場合,これにより腹腔内出血等の合併症が生じる高度の危険性があり,少なくとも3月1日の時点では,抗生剤の投与等による保存的療法(内科的治療)を行い,肝穿刺を実施すべきではなかったといえる。したがって,それにもかかわらず,被告B3らが,A4の肝内病変(肝内腫瘤)は感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいとして,A4に対する肝穿刺を実施したことには,当時の医療水準に照らしても,過失があるというべきである。

なお,被告らは,①A4はHPSを合併したSPTCLに罹患し,その治療目的でCHOP療法を行っていたことから,WBCが減少しており,肝内腫瘤(腫瘍)が胆汁瘻又は肝膿瘍であった場合,感染症等の発症から敗血症への移行が予想され,致死的な状態に陥ることに加えて,3月1日午前に採取された血液培養からR-CNSが検出されており,感染の可能性が極めて高かったこと,②肝穿刺を行った時点でのA4の凝固能は肝生検を行った時点よりも改善しており,更に血小板輸血まで実施して肝穿刺を行っており,リスクが大き
いものではなかったことなどからすると,被告B3が肝穿刺を実施したことに過失はない旨主張し,証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3)にはこれに沿う部分がある。

しかし,これらの証拠はいずれも,A4の臨床経過,腹部CT検査,MRI検査の結果等によれば,胆汁瘻や肝膿瘍である可能性は否定できないものの,最も疑わしいのは血腫であること,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であることなどの前記認定事実を前提としないものであって,にわかに採用することができないというべきである。加えて,上記で認定判断したとおり,3月1日当時のA4の病態は,仮にA4が感染症に罹患していた可能性があるとしても,必ずしも肝穿刺によって菌を同定しなくとも,抗生剤の投与等により対応できる可能性があったと認められるから,少なくとも,3月1日の時点において,血腫であることが最も疑われるA4の肝内病変(腫瘤)に対して,腹腔内出血等の合
併症が生じる高度の危険性がある肝穿刺を実施する必要性があったとは認めることができない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
以上によれば,被告B3が肝穿刺を実施したことには過失があるというべきである。」

「争点(4)(各過失と結果(A4の死亡)との間の因果関係の有無)について

被告B3が肝穿刺を実施した過失とA4の3月2日の死亡との間の因果関係について検討する。

まず,前記1⑷,⑸で認定した事実によれば,A4は,肝穿刺後,腹腔内出血が生じていることが認められるところ,腹腔内出血の原因について,鑑定人U2の鑑定意見では,解剖の結果,穿刺部位以外に出血源がないことから,肝穿刺がA4の腹腔内出血の原因であるとされ,鑑定人U1及び同U4各鑑定意見でも,腹腔内出血の原因は,肝穿刺であるとされているところである。また,鑑定人U3の鑑定意見では,心肺蘇生措置の際に肝血腫が破綻した可能性が高いとされているものの,肝穿刺との関連性は否定できないとされている。
前記解剖の結果のほか,上記各鑑定意見からすると,A4の腹腔内出血は,被告B3が実施した肝穿刺が原因となって生じたと認めるのが相当である。

次に,A4の死亡原因について,鑑定人U2の鑑定意見では,3月1日のA4の夜の急変時の臨床所見はショックであるが,昇圧剤への反応がないこと,HGBが3.2と著明に低下していること,解剖所見上,穿刺部に一致した肝表面の出血とそれに連続する肝内の比較的新鮮な血腫があり,その他に出血がなかったことから,A4の死亡原因は,肝穿刺が原因の腹腔内出血によるショック死であるとされているところであり,鑑定人U1の鑑定意見においても,腹腔内出血によって,急速にHCTが低下し,循環不全となって死亡したものと考えられるから,A4の死亡原因は,肝穿刺による腹腔内出血であったと考えるのが合理的であるとされている。鑑定人U4の鑑定意見では,剖検では腹腔内に1550mℓ の出血が認められているものの,この程度の出血量では,基礎疾患のない症例であれば,出血性ショックの状態には陥っても急死するには至らない可能性も十分あるが,急速な出血であれば高度の血圧低下から急性心不全へ進行してもおかしくないと考えられ,本症例では,A4に重篤な基礎疾患があり,それに対する化学療法が施行された状態で,全身状態が不良であったと考えられ,そこに出血性ショックが加わったため短時間に死に至ったと考えられるとされており,臨床経過的に悪性リンパ腫の増悪やDICの悪化による多臓器不全や化学療法の有害事象による死亡は否定的であるし,剖検所見でも他に急変死の原因となる疾患の存在は否定的であるとされているところであり,死亡原因は,肝穿刺が契機となった腹腔内出血による出血性ショックであるとされている。さらに,U3鑑定人の鑑定意見では,本件における死亡の原因は,SPTCLによる腫瘍死であるとされているが,これ,SPTCLという腫瘍があった故に起きた事象であり,最後の一瞬起きた事象だけをとらえてそれが死因であるというのは違和感を感じるからそのように判断したものであって,死に至った引き金が腹腔内出血によるショックであり,出血性ショックが心停止に関連していたことを否定するものではないとされているところである。

これらの事情からすれば,A4は,被告B3が実施した肝穿刺による腹腔内出血が原因となって死亡したと認めるのが相当である。

さらに,肝穿刺とA4の死亡との関係について,鑑定人U2の鑑定意見では,一般的に,リンパ腫は化学療法に反応することが多い上,化学療法実施後のA4のLDHの下がり方からすると,化学療法による寛解が期待できる可能性があり,A4が感染により死亡する危険性は取り分け高いわけではなく,A4が現在生存している可能性もあったとされている。鑑定人U1の鑑定意見では,非常に低い確率ではあるが,肝穿刺をしなくとも出血した可能性はあるが,肝穿刺をしていなければ,化学療法がある程度は奏効して,A4は3月2日に死亡せず,数か月生存した可能性が高いとされているところである。鑑定人U4及び同U3の鑑定意見でも,肝穿刺を実施なくとも腹腔内出血に至っていた可能性はあるものの,肝穿刺が実施されていなければ,3月2日の時点でA4が生存していた可能性は高いとされている。

以上のことからすると,被告B3が,肝穿刺を実施していなければ,A4が死亡した3月2日の時点においてなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当である。なお,A4の病態等に照らすと,肝穿刺を実施しなくとも,腹腔内出血が生じて死亡した可能性があることは否定できないとしても,本件腹腔内出血が生じて死亡した可能性があることは否定できないとしても,本件では肝穿刺によって腹腔内出血が生じたと認められる以上,上記認定判断を左右するものではない。

これに対し,被告らは,①1550mℓ という腹腔内の出血量からは,腹腔内出血が死亡の原因となったとは考え難いこと,②HPSを合併したSPTCLによる影響が強く示唆され,CHOP療法により肝組織に浸潤していた腫瘍が縮小することにより出血した可能性もあり,DICあるいはDIC疑いの状態にあったことから,穿刺部以外からの出血の可能性も否定できないこと,③HPSを合併したSPTCLを罹患したA4の肝生検後の遅発性血腫の予後は好ましくないことなどから,肝穿刺とA4の死亡との間に因果関係はない旨主張し,証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3)にはこれに沿う部分がある。

しかし,上記の認定判断に加え,被告ら提出にかかる乙B第4号証においても,臨床経過から本件患者の死亡原因はSPTCLによる腫瘍死を第一に考えるが,直接的な死因としては,腹腔内出血による出血性ショックと評価されると結論し,解剖において確認された腹腔内出血量はそれ自体では致死的な量とはいえないが,本件患者の場合には,SPTCL(HPS合併,IPI-Highリスク)の基礎疾患があり,PS(パフォーマンス・ステータス)4(身の回りのこともできず,常に介助を要し,終日就床を必要とする状態)と全身状態が極めて不良な状態で,腹腔内出血に至ったために死亡するに至ったものと評価できるとされているところであり,これらに照らすと,上記各証拠はいずれも採用することができず,ほかにA4が肝穿刺による腹腔内出血以外の原
因により死亡したと認めるに足りる的確な証拠はない。

したがって,被告らの上記主張は採用することができない。

以上によれば,被告B3が肝穿刺を実施した過失と,A4が3月2日に死亡したこととの間には因果関係があるというべきである。」
谷直樹

出典:弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医療事故認め2033万円 女性患者遺族に賠償へ /岐阜

岐阜市民病院(岐阜市鹿島町)で昨年12月、副腎皮質ホルモンを大量に投与する「ステロイドパルス療法」を受けていた市内に住む70代の女性患者が合併症で死亡していたことが30日、分かった。同療法の副作用の一つに血糖値の上昇があるが、同日記者会見した冨田栄一院長は「血糖コントロールが不適切だった」と医療ミスを認める一方、損害賠償金として2033万円を支払うことで遺族側と和解したことを明らかにした。

9月2日開会の市議会に、賠償金を計上した補正予算案を提出する。

病院側によると、女性患者は2015年11月下旬、意識障害のため緊急入院。同12月1日からステロイドパルス療法を始めた。内科の男性主治医は女性患者が糖尿病だったことを把握していたが、1回目の治療を終えた段階で、意識障害に改善傾向が認められたため、その後、血糖値の測定をしないまま治療を続行。ところが2回目の治療を終えた翌日の12月11日、容体が急変し、血糖値が高くなる高浸透圧高血糖症候群を合併して死亡した。【石塚誠】

出典:毎日新聞

千葉県がんC患者6千人減 医療ミス尾を引く 2年連続赤字

医療ミスが相次いだ千葉県がんセンター(千葉市中央区)で2015年度、延べの外来患者数が前年度比約7800人減、入院患者数も同約6400人減ったことが県病院局の集計で分かった。前年度も腹腔(ふくくう)鏡下手術による患者死亡問題で患者減だったが、落ち込み幅は拡大。本年度も7月までの4カ月間で3千人規模の減少が続き、歯止めがかかっていない。

15年度のがんセンターの外来患者数は前年度比5・5%減の約13万4千人、入院患者数は6・6%減の約9万1千人。手術数も12・8%(587件)減の4014件にとどまった。

前年度の落ち込み幅(外来患者1・5%減、入院患者4%減、手術数2・7%減)と比べても悪化した。

この結果、15年度のがんセンターの収益(収入)は、前年度比9億8千万円減の129億6千万円。収入から費用を差し引いた純利益は5億2千万円減の1億2千万円となった。

がんセンターは県立6病院の中で最多の収益があり、純利益も県病院事業全体の柱。しかし、低迷した結果、医師不足で患者数も減っている県立佐原病院の赤字(純損失)分をカバーできず、15年度の同事業会計の決算は2年連続の赤字(純損失約16億円)となる。

がんセンターでは、昨年12月以降、乳房の誤摘出やガーゼの体内置き忘れが相次ぎ発覚。本年度の4~7月も対前年同期比で、外来、入院患者ともに約3千人の減少が続いている。

県病院局は今年8月、同センターを含む県立病院の医療安全体制改善を図る外部監査組織を設置。「県民からの信頼を回復する取り組みを進め、患者数の回復を目指す」とした。

15年度のがんセンター以外の5病院の延べ外来患者は、こども病院が約1800人増、救急医療センターが約400人増。一方、佐原病院は約7400人減、精神科医療センター約2700人減、循環器病センター約600人減だった。

単体赤字は佐原病院(約7億2千万円)と循環器病センター(約3千万円)。

出典:千葉日報

彦根市立病院で 院内に調査委、ミスは否定

彦根市立病院(彦根市八坂町、金子隆昭院長)は8日、入院患者1人が今月3日、医療事故で亡くなったと発表した。一般的には死亡確率が1%未満の手術で2日後に死亡したという。同病院は医療事故調査制度に基づき、7日に第三者機関の「医療事故調査・支援センター」(東京都港区)に報告。院内に医療事故調査委員会を設置し、センターの支援も受けて調査する。

病院によると、患者は手術のため最近入院。1日に行われた手術中、急激に血圧が低下し、急きょ集中治療室(ICU)に移し治療したが3日に死亡した。

プライバシーを理由に患者の年齢・性別や病名などは明らかにしないが、同病院では年間10〜15件実施している手術で、死亡確率は低くこれまでに事故がなかったとしている。患者や家族にも死亡リスクを説明していなかった。しかし、患者が手術を契機に死亡したことが明らかなため、5日に院内事故対策委員会を開いて医療事故と判断したという。

記者会見した金子院長は「調査結果を待たなければならないが、一人の方が亡くなったのは事実。真摯(しんし)に受け止め、再発しないよう院内で検討していきたい」と話している。一方で「医療ミスではなかった」とし、担当医には現在も勤務を続けさせているという。

医療事故調査制度は昨年10月にスタート。医療機関は「予期せぬ死亡」があった場合、厚生労働省が指定した医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査への支援やセンターによる調査を受け、原因を究明して再発を防ぐ。【西村浩一】

出典:毎日新聞

情報共有不十分で肺がん患者死亡 名大病院謝罪

名古屋大病院(名古屋市昭和区)は13日、コンピューター断層撮影(CT)で肺がんの兆候が見られたのに、医師間で情報が共有されなかったため、見過ごされ、名古屋市の50代の男性患者が2年後に死亡する医療ミスがあったと発表した。

記者会見した石黒直樹病院長は「情報共有が不十分となった結果、重大な医療事故となった。患者さんとご遺族に深くおわびする」と謝罪した。

同病院によると、男性は2014年6月、高熱のため救急外来を受診。前立腺炎と診断され、2週間で症状が改善し受診を終えた。この際、CT検査を担当した放射線科医2人は「右肺に陰影があり、肺腫瘍の可能性がある」との画像診断報告書を作成していたが、救急外来や泌尿器科の医師は報告書を確認せず、男性にも伝わっていなかった。

男性は今年3月にせきが続いたため、同病院で再受診し、肺がんと診断された。「ステージ4」の状態で、7月に死亡した。

同病院は、情報の共有を徹底するため、15年6月から画像診断報告書の一元管理システムを導入。診療科の医師が報告書を読んでいない場合に電子カルテの画面上に未読通知を表示するようにしている。【梶原遊】

出典:毎日新聞

医療ミスで脳の血管刺し、くも膜下出血 横浜市立市民病院

横浜市立市民病院は2日、2月に50代女性患者の脳動脈瘤(りゅう)の手術をした際、血管を傷つける医療ミスがあったと発表した。女性は2週間後にくも膜下出血を発症。現在、呼び掛けに目を開く以外の反応はなく、回復は見込めない状態となっている。

病院が設置した外部有識者による調査委員会は、血管の損傷がくも膜下出血の原因になった可能性が高いとする報告書をまとめており、記者会見した石原淳院長は「患者や家族に深くおわびしたい」と謝罪した。

病院によると、主治医の50代の男性医師が2月16日、未破裂の動脈瘤を取り去る手術をした際、5ミリ離れた血管をはさみで刺した。すぐに止血処置をして経過観察したが、女性は3月1日にくも膜下出血を起こした。

男性医師は過去9年間で同様の手術を78件経験。過去に執刀した際の記録映像を外部の医師が確認したが、問題はなかった。〔共同〕

出典:毎日新聞

点滴ミス、患者が死亡 薬過剰投与 長崎川棚医療センター

国立病院機構長崎川棚医療センター(川棚町)は23日、入院患者に医師が指示した量の10倍のインスリンを投与する医療事故が起きたと発表した。患者はその後死亡した。同センターは「過剰投与が死因に関連した可能性がある」として遺族に謝罪するとともに、原因を調べている。

センターによると、患者は糖尿病などの持病があった80代女性。先月30日深夜、看護師が点滴用の液にインスリンを混ぜる際、指示では0・1ミリリットルだったインスリンを誤って1ミリリットル入れた。専用の注射器を使わずに測り、誤ったという。決められた複数人でのチェックも怠っていた。患者は点滴の開始から約8時間半後に死亡した。

今月2日、この看護師が別の患者用に点滴液を準備する際、専用注射器を使っていないことに同僚が気づきミスが発覚した。看護師は一連の処置が未経験で、処置方法を知らなかった。調査に「初めてということを知られたくなく、相談もできなかった」などと話したという。本来は8時間に1回の血糖値測定も実施せず、虚偽の数値をカルテに書き込んでいたことも分かった。

県庁で記者会見した宮下光世院長は「看護師の行為は大変遺憾で、亡くなった患者と家族におわびしたい」と話した。事故は医療事故調査・支援センターに報告し、検証するほか、川棚署にも相談しているという。【小畑英介】

〔長崎版〕

出典:毎日新聞

医療事故調査制度で過失認定 病院反発、遺族が提訴

胸腔(きょうくう)鏡手術のミスで女性が死亡したとして、愛知県東浦町の遺族が八月、刈谷豊田総合病院(同県刈谷市)側に六千五百万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。十月で開始一年を迎える国の医療事故調査制度のモデル事業を活用、さまざまな医療ミスが認定されたが、賠償額などで病院側と隔たりが生じ、遺族側が提訴に踏み切った。専門家は「病院側が調査結果に真摯(しんし)に向き合わないと遺族の理解を得られず、制度の利用も進まない」と警鐘を鳴らす。
訴状によると、亡くなった稲垣絹江さん=当時(75)=は二〇一三年十一月、トヨタグループや刈谷市などが運営する同病院で胸の腫瘍を摘出する胸腔鏡手術を受けた。担当医が誤って大静脈を傷つけ、輸血措置も不十分だったため、大量出血による脳症や多臓器不全で半月後に死亡した。
原告代理人弁護士によると、夫の寛治さん(81)ら遺族は、厚生労働省が昨年十月にスタートさせた医療事故調査制度の前身に当たるモデル事業を利用。厚労省が指定する第三者機関の日本医療安全調査機構(東京)と病院側が共同で調査し、手術ミスから事前の検査・説明不足まで幅広く認める結果が出た。
病院側は調査終了後の昨年二月、寛治さんらへの賠償について「顧問弁護士や保険会社と相談したところ、百万円にも満たないと言われた」と説明。病院独自の判断として口頭で五百万円を提示したが、その後の交渉では法的過失を一切認めなかったという。
刈谷豊田総合病院と代理人弁護士は取材に「現時点で話せることはない」とコメントしている。
<医療事故調査制度> 医療事故への社会的関心が高まる中、医療法に基づき全国約18万の医療機関全てを対象に昨年10月に始まった。診療中の予期せぬ死亡事故について、日本医療安全調査機構への報告や院内調査などが義務付けられている。モデル事業は、制度開始の前段階として2005年から昨年まで東京や愛知など12都道府県で実施。病院側が主体となる調査手法や遺族への結果説明など共通点が多い。

出典:東京新聞

大口病院4階で48人死亡 今年7~9月に 1日に5人も

横浜市神奈川区の「大口病院」で点滴を受けた男性入院患者2人が中毒死した連続殺人事件で、2人が入院していた同病院4階で今年7月から9月にかけて48人が死亡していたことが28日、捜査関係者などへの取材で分かった。神奈川県警神奈川署捜査本部は、これらのケースについても死亡の状況などに不審な点がないか慎重に捜査を進める。

捜査関係者などによると、4階では7月1日から9月20日までに48人が死亡。8月下旬には同じ日に5人が死亡し、9月初旬には4人が亡くなった日もあった。

4階は自分で食事ができないなど重症の患者が入院するといい、同院の高橋洋一院長は「医療法の改定で重篤な方を受け入れたことと関係していると思ったが、確かに『多いかな』という印象だったので院内感染を疑った」としている。

出典:産経ニュース